自称俳優図鑑──愛すべき自称俳優たち

声を磨くということは、何かを足していくことではない。
むしろ、余計なものを削ぎ落とし、素の声に戻していく作業だ――。
『クセ取りが9割』は、声優講師kaoriが現場と講座の両面からたどり着いた「整えるとは削ぐこと」という結論を、丁寧に言葉にした一冊。
多くの人が気づかないまま抱えている「声のクセ」。
それは、個性のように見えて、実は“伝わらない原因”になっていることが少なくない。
語尾がのびる、第一音がぬるっと始まる、形容詞が無色になる――。
その小さなズレが積み重なると、どれだけ内容がよくても届かなくなる。
本書では、声の癖を「悪」ではなく「心の防御反応」として捉える。
クセは、心を守るために無意識に張られた膜。
それを一枚ずつ剥がしていくことで、声は本来の姿を取り戻していく。
削ぐことは、捨てることではない。
磨くことでもない。
ただ、戻ること。
さらに、NHKアナウンサーのリズム模写や、朗読・ナレーションの「出だし」「息」「余白」の整え方も具体的に紹介。
読解力を高める訓練法として、写し取りの効果やモノマネの活用法にも触れる。
また、章末には哲学者リス「イナン教授」が登場し、声と心の関係を俯瞰する一言を添える。
声に意思がないと、聞く意味が生まれない。
逆に、意思をもって削ぎ落とせば、どんな声も“聴き手を導く声”へと変わる。
あなたの中に眠る本来の声は、もうすでにある。
あとはその声を覆う薄い膜を、静かに取り除くだけでいい。
『クセ取りが9割』――それは、声に限らず、生き方を整えるための哲学でもある。