声優マインド講座

緊張した時の不思議現象図鑑── 口は乾き、指は冷え、原稿は波打つ

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本番前になると、体はなぜか不思議な動きを始める。

何度も経験しているはずなのに、毎回どこか落ち着かない。

頭では「大丈夫」と思っている。

準備もしている。

原稿も確認した。

それなのに、体だけが勝手に祭りを始める。

口が乾く。

手がしっとりする。

指先が冷たくなる。

顔がテカる。

持っている原稿が波打つ。

そして、なぜか少しふらつく。

右手と右足が同時に出ることは、さすがにない。

しかし、床との信頼関係が少し揺らぐ。

今回は、そんな「緊張した時の不思議現象」について話してみたい。

口が乾く

本番前、急に口の中が乾くことがある。

さっきまで普通だったのに、いざ話そうとすると口の中が砂漠になる。

水を飲んでも、なぜかすぐ乾く。

これはかなり困る。

声を出す仕事をしている人にとって、口の乾きは地味に怖い。

滑舌にも影響する。

舌が動きにくくなる。

言葉が少し引っかかる。

そしてさらに緊張する。

見事な悪循環である。

手がしっとりする

緊張すると、手だけが妙にしっとりすることがある。

顔は平気そうにしている。

声も落ち着いている。

でも手だけが正直である。

原稿を持つ手が、じわっと湿ってくる。

本番前の手汗は、なかなかの存在感を持っている。

そしてこの手汗は、次の現象を呼ぶ。

原稿が波打つ

手がしっとりすると、持っている原稿が少しずつ波打ってくる。

最初はきれいな紙だった。

しかし本番前に何度も持ち、何度もめくり、何度も確認しているうちに、紙が湿気を吸う。

気づけば原稿が、うっすら海藻のようになっている。

本人は真剣である。

会場では厳かな空気が流れている。

しかし手元では、原稿だけが小さく波打っている。

なんとも切ない。

そして少し面白い。

指先が冷たくなる

緊張すると、指先だけ冷たくなることもある。

体は動いている。

会場も寒いわけではない。

それなのに、指先だけが冷たい。

血液はどこへ行ったのか。

本番前の体は、こちらの許可なくいろいろな調整を始める。

その結果、指先だけが妙に冷えている。

人間の体は、本当に忙しい。

顔がテカる

緊張すると、顔がテカることもある。

普段は落ち着いているのに、本番前だけ顔に光が集まる。

照明のせいではない。

心当たりはある。

緊張である。

口は乾いているのに、顔はテカる。

手はしっとりしているのに、指先は冷たい。

体の各部署が、まったく違う方針で動いている。

統一会議を開いてほしい。

ふらつく

緊張しすぎると、少しふらつくこともある。

右手と右足が同時に出るほどではない。

しかし、足元が少し頼りない。

地面はいつも通りそこにある。

けれど、自分の感覚だけが少し浮いている。

本番前は、体の重心がどこか迷子になることがある。

そんな時は、無理に気合いで押し切ろうとしない方がいい。

本番が始まると、なぜか戻る

不思議なことに、こうした現象は本番が始まると落ち着くことが多い。

司会なら、第一声を出した瞬間。

芝居なら、最初のセリフを言った瞬間。

ナレーションなら、読み始めた瞬間。

体が「あ、始まった」と理解する。

すると、さっきまで大騒ぎしていた体が、少しずつ本番モードへ戻っていく。

緊張は、本番前が一番うるさい。

始まってしまえば、体は意外と仕事を思い出す。

原稿と同化しすぎない

緊張すると、人は原稿にしがみつきたくなる。

もう一度読もう。

もう一度確認しよう。

もう一度覚えよう。

もちろん確認は大切だ。

しかし、原稿と自分の距離が近づきすぎると、かえって苦しくなることがある。

原稿一枚の中に、自分を閉じ込めてしまうからだ。

そんな時は、原稿と同化するのではなく、地球と同化してみる。

足の裏を感じる。

床を感じる。

重力を感じる。

自分が今、ちゃんとここに立っていることを思い出す。

部屋中の空気と同化する

地球と同化するのが大げさに感じるなら、部屋中の空気と同化してみるのもいい。

自分だけを小さく固めない。

原稿だけを見つめない。

会場全体へ意識を広げる。

空気の広さを感じる。

人の気配を感じる。

その場全体の中に、自分の声を置く。

緊張している時ほど、意識は狭くなる。

だからこそ、少し広げてみる。

原稿より、部屋の空気の方が広い。

原稿より、地球の方が広い。

まとめ

緊張すると、体にはいろいろな不思議現象が起こる。

口が乾く。

手がしっとりする。

指先が冷える。

顔がテカる。

原稿が波打つ。

少しふらつく。

しかし、それは必ずしも失敗のサインではない。

体が本番に向けて反応しているだけのことも多い。

大事なのは、緊張をなくすことではない。

緊張している体と、どう付き合うかである。

原稿と同化しすぎない。

地球を感じる。

部屋の空気を感じる。

そうすると、自分の声は少し戻ってくる。

本番前に原稿が波打っても、大丈夫。

あなたの体は、ただ一生懸命準備しているだけなのだから。