世の中には、自己啓発本がたくさんあります。
「自分を信じよう」
「夢を叶えよう」
「恐れを乗り越えよう」
そう書かれている本は、数多くあります。
けれど、読み終えたあとに、こう思ったことはないでしょうか。
「それで、具体的にはどうしたらいいの?」
理想の姿を見せてくれる本はたくさんあります。
でも、その理想へ向かうために、実際に何をすればいいのか。
そこまで具体的に教えてくれる本は、意外と少ないように思います。
そんな中で、私が人生レベルで影響を受けた本があります。
『5つのツール──勇気・自信・創造性を手にいれる方法』
これは、ただの自己啓発本ではありません。
人生を前に進めるための、実践の本です。
この本は、かなり強く背中を押してくる
この本は、やさしく寄り添うだけの本ではありません。
「あなたはそのままでいいんですよ」と、ふんわり包んでくれるタイプの本ではない。
むしろ、かなり強く背中を押してきます。
進め。
逃げるな。
自分の力を使え。
そんな圧があります。
でも、私はそこが好きです。
迷っている時、やさしい言葉が救いになることもあります。
でも一方で、やさしい言葉が逃げ道になってしまうこともあります。
この本は、逃げ道をふさいできます。
だから、読んだあと、もう言い訳ができなくなります。
「勇気がないから」
「自信がないから」
「タイミングが悪いから」
そう言いたくなっても、この本には「では、どうするか」が書かれている。
そこが、すごいところです。
勇気を持つのに、国は関係ない
この本の魅力のひとつは、実例が出てくることです。
実際に悩みを抱えた人たちが、ツールを使いながら少しずつ変化していく。
その過程が描かれています。
登場する人たちは日本人ではありません。
でも、そんなことは関係ありません。
勇気を持つのに、国は関係ない。
人が怖がること。
逃げたくなること。
自分に負けそうになる瞬間。
そこには、国や文化を超えた共通点があるのだと思います。
声優を目指す人も同じです。
人前で声を出す。
評価される。
選ばれる。
落とされる。
比べられる。
そこには、必ず怖さがあります。
でも、その怖さを避け続ける限り、前には進めません。
苦しみに突進せよ
この本の中で、特に印象に残っている考え方があります。
前進すれば、苦しみはあとずさりする。
これは、私の好きな作家であるヘルマン・ヘッセの「苦しみに突進せよ」という考え方と、とても近いものだと感じています。
苦しいから逃げる。
怖いから避ける。
傷つきたくないから動かない。
そうしているうちに、苦しみはどんどん大きくなっていきます。
けれど、怖くても一歩前に進む。
苦しみの方へ、自分から踏み込んでいく。
すると、不思議なことに、苦しみの方が少し後ろへ下がる。
これは、声優の練習にも通じます。
苦手な台詞。
苦手な感情表現。
人前で演じる怖さ。
自分の声を聞かれる恥ずかしさ。
それらを避けている間は、ずっと怖いままです。
でも、一度そこへ踏み込むと、景色が変わります。
上手くできるかどうかではありません。
逃げずに向き合ったという事実が、自分の中に残ります。
その積み重ねが、声にも、生き方にも表れてくるのだと思います。
進んで与える愛と、自己主張
この本には、「進んで与える愛」という考え方も出てきます。
これも、とても深いツールです。
一見すると、「愛を与える」という言葉は、やさしさや受け入れの話のように感じるかもしれません。
でも、私はこのツールのすごさは、自己主張につながるところにあると思っています。
相手とどこかでつながっている感覚が持てると、自分の主張をすることへの恐怖が少し薄れます。
「嫌われたらどうしよう」
「変に思われたらどうしよう」
「否定されたらどうしよう」
そんな不安に飲み込まれにくくなる。
相手を敵だと思わない。
世界から切り離された一人ぼっちの存在だと思わない。
そういう感覚があると、自分の意見も出しやすくなります。
声優にとって、これはとても大切なことです。
演技は、相手との関係の中で生まれます。
自分だけが正しいと押し通すのではなく、相手とつながりながら、自分の表現を出していく。
そのためには、怖がって自分を消すのではなく、つながりを感じながら自分を出す力が必要です。
内なる権威を持つこと
私がこの本の中で一番好きなのは、「内なる権威」という考え方です。
これは、特に内向的な人には、とても効果があると思っています。
内向的な人は、周りの空気に敏感です。
人の表情や声のトーンを読みすぎてしまうこともあります。
もちろん、それは繊細さでもあります。
でも、その繊細さが行きすぎると、いつの間にか自分を見失ってしまう。
聞き手に認めてもらおうとしすぎる。
相手の反応に合わせすぎる。
嫌われないように、自分を小さくしてしまう。
でも、それでは自分の声が消えてしまいます。
聞き手に認めてもらおうとしないこと。
これは、声を出す人にとって、とても大事なことだと思います。
もちろん、聞き手を無視するという意味ではありません。
独りよがりになるという意味でもありません。
そうではなく、評価をすべて外側に預けないということです。
自分の中に、自分を支える軸を持つ。
それが「内なる権威」です。
人の顔色ばかり見ていたら、自分ではなくなってしまいます。
自分を売り渡してはいけない。
これは、声優を目指す人にも、表現をする人にも、強く伝えたいことです。
役のために変わる柔軟さは必要です。
でも、自分そのものを差し出して、誰かに認めてもらうためだけに声を出す必要はありません。
最後に人の心を動かすのは、自分の声を持っている人です。
どん底の時ほど、このツールはきつい
正直に言うと、この本に出てくるツールは、どん底にいる時ほどきついと思います。
動けない時に「進め」と言われる。
自信がない時に「自分の力を使え」と言われる。
怖い時に「その怖さの方へ行け」と言われる。
それは、決して楽なことではありません。
私自身、ひどい鬱になった過去があります。
この本に出会った時には、すでにどん底そのものは抜け出していました。
でも、勇気も自信もありませんでした。
だから、何度も読みました。
一回読んで終わりではありません。
何度も、何度も読みました。
もう、この本だけでいいと思うくらい読みました。
そして、すぐに劇的な変化が起きたわけではありません。
でも、忘れた頃に、少しずつ変化が起き始めました。
自分を一から振り返るようになりました。
生活全般が変わっていきました。
食べるもの。
触れるもの。
付き合う人。
そういうものが、少しずつ変わっていきました。
人生が、静かに動き始めたのだと思います。
この本をくれた人への感謝
私は、この本をくれた人にとても感謝しています。
あの時、この本に出会えたことは、運命だったのではないかと思っています。
本との出会いには、タイミングがあります。
同じ本でも、出会う時期によって、まったく違う意味を持つことがあります。
私にとって『5つのツール』は、まさにそういう本でした。
読むたびに、自分の中のどこかに引っかかる。
忘れた頃に、また必要になる。
そして気がつくと、少し前の自分とは違う場所に立っている。
そういう本です。
声優を目指す人に、この本を薦めたい理由
声優を目指す人には、技術が必要です。
発声。
滑舌。
アクセント。
演技力。
読解力。
どれも大切です。
でも、それだけでは続かないことがあります。
自信をなくす日があります。
人と比べて落ち込む日があります。
怖くて動けない日があります。
自分を売り渡しそうになる日があります。
そんな時に必要なのは、心を前に進めるための道具です。
『5つのツール』は、その道具を与えてくれる本です。
読むだけではなく、使う本です。
慰めてもらうだけではなく、立ち上がるための本です。
だから私は、声優を目指す人にこの本を薦めたい。
特に、自信がない人。
人の顔色を見すぎてしまう人。
内向的で、自分を出すことが怖い人。
でも、本当は表現したい人。
そういう人にこそ、読んでほしいと思います。
これは、単なるおすすめ本ではありません。
人生を動かすための工具箱です。
そして、声を出して生きていく人にとって、きっと大きな支えになる一冊です。