鼻声の衝撃とレモンのいれもん
「この声、なに……完璧すぎるやん」
小さいころ、ドラえもんの声を聞いて、しばらく頭の中がピッタリその声で埋め尽くされた。
まあるくて、明るくて、どこか頼りがいがあって、なんやもう……声が完成されとった。
で、もっとびっくりしたんが——
「えっ、この声、大人の女性なん!?」
ほんまにリアルに、ひと晩寝られへんかった記憶ある。(嘘やけど)
そこからや。「声ってなんやろ、誰でも出せるのに、全然ちゃうやん」って思い出したんは。
高校生になると、アナウンサーの滑舌にうっとりし、北野誠の深夜ラジオで笑い転げ、
声優さんの名前を覚え、アニメのクレジットに目を凝らし——
でもな、何より忘れられへんのが、佐々木望の“鼻声”との出会いやった。
声優が本人を超えるとき 〜石丸ジャッキーの衝撃〜
映画もよう観てたんやけどな。ジャッキー・チェンの吹き替え版、見たことある?
……あれ、石丸博也さんの声のほうが、もはや“ジャッキー感強い”っていう奇跡起こってるやん。
アクション決めながら「ホアッ!」って叫ぶ声がもう、石丸ジャッキーじゃなきゃ成立せんって思うくらいクセになってて、
本物のジャッキーの声聞いたら「え、ちょっとおとなしない?」ってなる現象あるやん?
そのとき思ったんや。
「声って、本人を超えることあるんや…」
吹き替えって訳すだけやと思ってたけど、その人の身体を通して、“もう一人のジャッキー”が生まれる感じ。
声って、存在そのものやん。ほんま、衝撃やった。
一対一で語りかけられる奇跡 〜森田美由紀の声の魔力〜
NHKの静けさの中に、突如現れる落ち着いたあの声。
森田美由紀アナの語りを初めてちゃんと聞いたとき、正直、動けへんかった。
聞いた瞬間、なんか知らんけど「わたし今、選ばれて聞かされてる」って思ってもうた。
自分一人のために語りかけられてる感がハンパなかったんよ。
発音も完璧。言葉のテンポも無駄なし。読み手の気配が美しすぎる。
声ってただの音じゃない。
距離感を作り出せる力なんや。
あたしにそれを教えてくれた人やと思う。
鼻声が武器になるなんて、誰が思った?
初めて佐々木望の声を聞いたとき、正直「鼻声ちゃう?」って思った。
しかもまあまあキてるタイプの鼻声。
けどな、そこからなんや。
一回気になったら最後、耳が離してくれへん。
クセになる。なんかもう、“鼻に住みたい”ってなる。いや住まんけど。
佐々木望の声には、“その人にしか出せへん音”ってだけで、心つかまれる力があった。
それって、たぶん技術がどうこうっていう話やなくて、
声に“体温”があるってことやと思う。
あたしにとって、あれが声の革命やった。鼻声革命。略して“はな革”。
笠原弘子の歌声、天から降ってきた説
逆に、“お手本にしたい可愛さ”ってのもあって。それが笠原弘子。
初めて歌声聴いたとき、たぶん心臓がピンク色になった。
音程も、声質も、全部がちょこんとしてて、
「この声にランドセル背負わせたい(知らんけど)」って思った。
当時のあたしは、笠原弘子の歌をひたすら真似してた。
裏声でも地声でもなく、“ひかえめ天使ボイス”を目指して研究しまくった。
ただな、当時の声優業界って、今みたいに“歌も上手くて当たり前”みたいな感じちゃうかってん。
「歌は苦手でも、とりあえず歌っといてな」って空気が普通にあった。
せやから、ほんまに歌声で魅せられる人って、めっちゃ貴重やってん。
笠原弘子は、その中でもズバ抜けてた。
歌がうまいとか下手とかやなくて、
「この声がこの歌を成立させてる」って思えるタイプ。
あたしもその声に引っ張られるようにして、
「自分の声って、もしかして何かに使えるんちゃうか?」って思えるようになったんよ。
レモンのいれもんでも泣ける声
そういえば最近、奈良岡朋子の朗読を聞いて、びっくりしたんや。
もうな、レモンのいれもんレベルのどうでもええ文章でも、
その声で読まれたら、空気が変わる。
急に部屋が静まって、時間が止まって、
「え、なんで泣きそうになってるん?」って自分で自分に引くレベル。
声って、それだけで人を包み込めるんやなと思った。
あたしが声を教える理由
ドラえもんの完璧な声。
ジャッキーを超えた石丸博也。
鼻声の佐々木望に惹かれて、
笠原弘子の声を自分の喉で再現しようと必死やった日々。
奈良岡朋子の朗読で泣きそうになって、
森田美由紀の声に「ありがとう」も言えんまま救われた深夜。
あたしは、声の“奇跡”をいっぱい浴びてきた。
せやから今、誰かの声の可能性を開く手伝いができたらええなって思ってる。
声は、生きてる。
その人の全部が、そこに出る。
あたしが声を教える理由——
それは、「あなたの声にも、きっと何かがある」と信じてるからや。
あとがき
あらためて振り返ってみたら、
あたし、人生ずーっと“声”に振り回されとるなあと思いました。
けどまぁ、ええ声に振り回される人生って、けっこう幸せやな。
「この声しかあり得へん」と思わせる力。
「この声やから、心が動いた」と言わせる力。
そんなふうに、声ってたまに、とんでもない魔法をかけてくる。
せやから、これからもあたしは、
声を教えるし、
声に惚れ続けるし、
鼻声の話もたぶん何回もすると思う。
最後まで読んでくれてありがとう。
あなたの声にも、何かおもろい魔法がかかってますように。